今後の成長に向けて:中期経営計画における基本戦略

2021-01-26
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三菱重工はこれまで、エネルギーやインフラから、防衛・宇宙まで、あらゆる分野で高度な技術開発を通じ、社会に貢献してきました。しかし、既存事業の多くは成熟期を迎え、社会のニーズは多様化・高度化の一途を辿っています。この課題をクリアするため、三菱重工は2021年度~2023年度の中期経営計画において、今後特に注力する成長分野を策定しました。グループ全体の収益力を強化し、三菱重工の未来への足がかりを築き始めています。

取締役社長兼CEO・泉澤清次はこう述べます。「長い歴史の中で培われた技術に最先端の知見を取り入れ、変化する社会課題の解決に挑み、人々の豊かな暮らしを実現することが重要だ」。

エネルギーシステム市場における優位性を活かしたカーボンニュートラル社会の実現。モビリティやロジスティクス分野におけるデジタル・人工知能といった新技術の活用。統合防衛・サイバーセキュリティへの取り組み。三菱重工は、こうした総合的なソリューションの提供を通じて、より安全で快適な社会の構築に貢献していきます。

三菱重工の中期経営計画
三菱重工の中期経営計画

一方、忘れてはならないのが、収益性回復・強化の視点です。すでに、固定費の削減やサービス比率の向上、部門間の技術共有の改善などによる生産性向上に取り組んでおり、2023年度の営業利益率は7%、株主資本利益率は12%を見込んでいます。今後、さらに強固な財務基盤を確立し、前回2018年度~2020年度の中期経営計画の倍以上となる1,800億円を成長分野に投資予定。2023年度までに1,000億円、2030年度までに1兆円の増収を目指しています。

新しい中期経営計画に記された、今後注力すべき成長領域は主に2つ。1つ目が、「エナジートランジション」です。日本は2050年までのカーボンニュートラル実現に向け、火力発電の脱炭素化、原子力発電や再生可能エネルギーの利用拡大を段階的に進めています。また、重工業や輸送機関の効率改善による炭素排出量削減、電力・産業分野におけるCO2の回収・リサイクル技術の開発も進展しています。将来的には、アンモニアや水素など、環境負荷の少ない燃料へと全面的に切り替わっていくでしょう。こうした動きの中で三菱重工は、生産者や電力会社、エンドユーザーに向けたさまざまな製品・技術の開発を行い、新たな生産設備の建設や輸送インフラの整備、最終需要の創出まで、総合的なバリューチェンの構築に貢献することを目指しています。

「長い歴史の中で培われた技術に最先端の知見を取り入れ、変化する社会課題の解決に挑み、人々の豊かな暮らしを実現することが重要だ」泉澤清次三菱重工業㈱取締役社長兼CEO

2つ目の注力分野が、「モビリティ等の新領域」です。物流・冷熱・ドライブシステム、プラント・インフラシステムといった既存事業のノウハウを組み合わせ、よりインテリジェントな活用を図ります。すでに生産している製品と、デジタル・AIと融合させることで、新たな価値を生み出します。

自動倉庫、自動フォークリフトトラック、自然冷媒冷凍機、およびAIベースの管理システムを使用するエンドツーエンドの「コールドチェーン」システムがその代表例です。冷蔵食品や医薬品が工場で製造されてから消費者に届くまで、低温管理された状態で、安全で効率的な配送を実現しています。こうしたソリューションの開発においては、学術機関をはじめとする外部パートナーとの協力も強化し、より革新的な技術開発を目指します。

明確な財務目標と、厳選した成長分野への積極投資。新しい中期経営計画が示すこの両軸が、三菱重工の飛躍へ向けた大きな一歩になるでしょう。

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ダニエル・ボーグラー

ジャーナリスト。25年以上にわたり、アジア、ヨーロッパ、アメリカの国際的な報道機関で勤務した経験をもつ。