機械システム:MHIの中核を担うエンジニアたち

2026-04-09
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道路料金システム、風洞、粒子加速器、クレーン、紙工機械は、三菱重工グループの主要部門の一つである三菱重工機械システム(MHI-MS)の製品です。

MHI-MSは、三菱重工グループで最多クラスの事業、製品、技術を有しています。これは、長年にわたり新たな技術を獲得し、製品を開発、統合してきたMHI-MSの歴史そのものです。現在、当社はモビリティ、設備インフラ、印刷紙工機械の3事業部門で構成され、それぞれが売上のおよそ1/3を担っていますが、今後も、当社の事業構成は時代の要請とともに変化し続けていくと考えています。  

多岐にわたる当社の事業の根底にあるのは、メカトロニクスという考え方で、機械工学、電気工学、コンピュータ工学を融合させ、自動化されたシステムを設計するという概念です。目に見えるもの(ハードウェア)を機能させるために、目に見えないもの(運用・制御システム)を最大限に活用しています。私は、メカトロニクスとは、機械に「命を吹き込む」ことだと考えています。   

技術のインキュベーター

こうした取り組みを実現するため、当社は三菱重工グループの中でもおそらく最も幅広い技術領域を活用・保有しています。その結果、グループ全体に向けた新製品のインキュベーターとしての役割も担っています。また、グループ各社の中でも電気系エンジニアの在籍数が最も多いだけでなく、土木工学、建築学、さらには化学を専門とする人材も擁しています。

その結果、エナジー、原子力、防衛といったグループ内の他事業部門において、日常的に私たちの専門性が活用されています。かつては、人材を出向させる形で支援を行っていましたが、現在では、プロジェクト単位で業務そのものを任されており、一種のサブコントラクターとしての役割を担うようになっています。 

そういう意味でも、MHI-MSは三菱重工グループの中でも少し変わった存在です。神戸に本社を置く独立した会社として設立され、神戸および三原に工場を構え、約2,600名の従業員と全国に広がる拠点ネットワークを有しています。この体制により、専門領域に特化した事業部門に比べて、幅広い技術分野への対応が可能となっています。

多様な事業を展開し、他事業部門への支援も担うMHI-MSは、「常に新たな挑戦に取り組む精神」を持っています。今日ではその姿勢が、人工知能(AI)を「適切な形」で活用することにもつながっています。AIは、学習やパターン認識を得意としており、その特性を生かすことで、当社の多くの製品に有用なツールとして組み込むことが可能です。一方で、機械の中には、「機械学習」に委ねるのではなく、厳格なルールに基づいて運用する方が適しているものもあります。最終的に、AIはあくまで数あるツールの一つに過ぎず、つまるところ、最も重要なのはハードウェア・ソフトウエアともに品質なのです。

スマートな梱包

ここからは、MHI-MSのフィロソフィーと、それを実務の中でどのように具現化しているのかを、いくつかの事例を通じてご紹介します。当社は、60年以上にわたり紙工機械の製造に携わり、世界30カ国以上のお客様のニーズに応えてきました。その結果、eコマースの拡大を背景に成長を続ける約3,500億円(約20億米ドル)規模の市場において、確固たるポジションを築いています。

当社のコルゲートマシンは、1分間に400メートルの段ボールシートの生産を可能とする、世界最速クラスの性能を誇ります。その下流工程では、コルゲートマシンで生産した段ボールシートを当社製の製函機により、段ボール箱に加工します。製函機では、最大4色の印刷、打ち抜き、折りたたみの工程が一気通貫で行われます。当社の製函機の中で最上位機種であるEVOLは、「デュアルスロッター」ユニットを使用することで、1時間あたり最大48,000箱の生産が可能であり、圧倒的な生産性を実現しました。当社は過去20年間で世界累計700台以上のEVOLを販売してきました。

最近では、コルゲートマシンにおいて、段ボール表裏の水分量の差によって生じる反りをAIを用いて予測し、リアルタイムに最適な調整を行う機能を開発しました。さらに、紙工機械の北米事業では、生成AIを活用することで、アフターサービスのオンコール対応の改善、品質向上も進めています。

もう一つのイノベーションが、COMPOX(コンポックス)です。これは、当社の紙工機械事業の技術と、食品包装機械の技術を融合して生まれた製品です。COMPOXは、出荷される製品のサイズに合わせた異なるサイズの箱を柔軟に製造できるため、箱内の不要な空間の削減により、コスト低減とサステナビリティの向上を同時に実現します。つまり小さな商品が大きすぎる箱の中でガタガタと動く――そんな無駄な梱包が減らせるわけです。

Three-Dimensional Variably Sized Box-Making Machine COMPOX
3辺サイズ可変製箱機『COMPOX』

将来の展望

二つ目の事例は、当社の電子式道路課金システム(ERP:electronic road pricing)です。MHI-MSはこの分野にいち早く参入し、1998年にシンガポールで道路課金システムが導入されて以来、約30年にわたり主要技術提供者及びシステム・インテグレーターとして、この市場を牽引してきました。現在は、次世代システムであるERP2の導入が進められています。ERP2は、特定の高速道路にとどまらず、シンガポール全土の道路網を対象とし、二輪車を含むすべての車両に適用される仕組みです。これは、世界で初めて実現する大規模の道路課金システムです。

特筆すべきは、ERP2が画期的な技術であるという点です。衛星測位データを活用することで、物理的な料金ゲートを不要とし、車両の位置や時間帯に応じた変動料金制を可能にしています。この仕組みは単に収益を生むためのものではありません。より重要なのは、交通渋滞の緩和を通じて、安全性と生産性の向上に寄与する点です。さらに将来的には、ドライバーが交通状況や駐車場の空き情報など、多様な情報を受け取れるようになることも想定されています。

Electronic Road Pricing System “ERP2” in Singapore
シンガポールにおける電子式道路課金システム『ERP2』

MHI-MSが、このように高度で意欲的な製品やシステムを開発・市場投入できるのは、異なる産業の中で長年培ってきた製品群という、確かな事業基盤があってこそ、です。

こうした点を総合すると、私はMHI-MSが今後5年以内に売上高2,000億円(約13億米ドル)という目標を達成できると、確信しています。同時に、三菱重工グループ全体の収益性向上に貢献し続けるとともに、社会の発展にも寄与していけると考えています。当社が有する多様な技術、人材の専門性、そして長年にわたる経験の蓄積は、グループ全体にとって極めて価値の高い経営資源です。そしてそれこそが、私の考える、三菱重工の「コングロマリット・プレミアム」です。

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小嶋 聡

小嶋 聡

三菱重工機械システム株式会社 取締役社長