米国でエナジートランジションを力強く牽引する三菱重工のパワービジネス

2023-06-14
bill-newsom-park.jpg

発電ビジネスに携わって30年、そのうちの19年はここ米国のMitsubishi Power Americasで勤務しています。このビジネスのあらゆる面を見てきましたが、単に良い企業と真に素晴らしい企業の違いを一つだけ挙げるとすれば、それは“信頼関係”です。

深い信頼関係は、製品を開発し、ビジネスモデルを構築し、さらに変化する市場にスピード感を持って対応するために不可欠です。Mitsubishi Power Americasでは、顧客、サプライヤー、職場の同僚はもちろん、連邦政府から地域社会まで全てのステークホルダーとの関係を大事にしてきました。

米国は2050年のカーボンニュートラル実現に向けたエナジートランジションの最中にあり、私たちにとってエキサイティングな時期にあると言えます。2022年8月にはインフレ抑制法(IRA:Inflation Reduction Act)が成立し、再生可能エネルギーや電気自動車、水素製造や炭素回収といった様々なクリーン技術に対して、税控除や補助金を通じ、約3,700億ドルを投じるとしており、エナジートランジションの動きが加速しています。IRAが成立したことで、今後30年間、米国市場は力強く成長すると考えています。

確かな実績を積み上げて信頼を育む

Mitsubishi Power Americasは米国市場のポテンシャルを十分に活用できる理想的な立場にあります。米国の発電部門では過去20年間、エネルギー効率の改善や燃料を石炭から天然ガスや再生可能エネルギーに切り替えることで、単位発電量当たりのCO2排出量を約40%削減することに成功しており、このプロセスは今後も続いていきます。

三菱重工のヘビーデューティ型(※)ガスタービンは、世界トップクラスの発電効率を誇り、業界をリードしています。最新の調査レポート(米国マッコイ・パワー・レポート)によると、三菱重工グループは2022年のヘビーデューティ型ガスタービン市場において米州ではシェア2位、グローバルでは全体の49%となるシェア1位を獲得したマーケットリーダーです。

※重構造型と呼ばれるタイプで、信頼性が高いことに加え、設置現場でのメンテナンスがしやすく保守頻度を低く抑えられるガスタービンを指します。

当社のタービンを差別化しているのは、確かな信頼性です。三菱重工は兵庫県の高砂製作所で実際の発電設備(第二T地点)を運転しています。そこでは、当社の最新モデルであるJAC(J-Series Air-Cooled)形ガスタービンが24時間稼働し、長期的な信頼性を検証すると同時に、地域の送電網に電力を供給しています。これほどの規模の設備は業界では他に類がなく、競合他社をはるかに凌ぐ信頼性に対する投資の証でもあります。私は顧客に対して、高砂製作所に来て自身の目で見てほしいと常に言っています。高砂製作所を訪れた顧客は、当社の信頼性に対する姿勢を評価し必ず購入してくれるのです。

例として、米国南部に電力を供給する大手電力会社のエンタジー社(Entergy)とのプロジェクトを紹介しましょう。エンタジー社はルイジアナ州やテキサス州において発電事業を行っていて、4件連続でGTCC(Gas Turbine Combined Cycle)プロジェクトのガスタービンサプライヤーとして、三菱重工グループを選びました。彼らは、技術だけではなく、将来にわたり脱炭素を進めるためのパートナーとして当社を評価したのです。もう一つの例は、当社が初期段階の基本設計を受注したある企業とのプロジェクトです。当社グループは、石炭ボイラーを先進のガスタービンに置き換え、CO2回収装置を設置する検討に取り組んでいます。

私が顧客と会話すると、「数多くのサプライヤーの中でも三菱重工グループは 心から信頼できる会社」とよく言われます。彼らは、長期的な視点を重視し、互いの信頼関係に基づき最新の知見を共有し、パートナーとして顧客とともエナジートランジションを推進しようとする三菱重工グループの姿勢を評価しているのです。

Plant McDonough Aerial View (Credit: Georgia Power)
マクドノフ・アトキンソン発電所(写真提供:ジョージア・パワー社)

発電におけるエナジートランジションの次のステップは、水素燃料の利活用と言えるでしょう。第一段階は、天然ガスと水素を混焼できる発電用ガスタービンによって、CO2排出量を削減することです。2022年6月、当社はジョージア・パワー社と共に、マクドノフ・アトキンソン発電所で、GTCC発電所における水素と天然ガスの混合燃料による燃焼実証試験に成功しました。マクドノフ・アトキンソン発電所では、三菱重工製のM501G形ガスタービンを中核とするGTCC発電設備で天然ガスを利用した発電を行っており、すでに2007年と比較して60%以上のCO2排出量削減を実現していました。実証試験ではこれら既存インフラを活用して、天然ガスに水素を20%混ぜて検証しました。この種の試験としては世界初、かつ、史上最大規模で、天然ガス100%で発電する場合に比べて、CO2排出量は約7%削減されます。

マクドノフ・アトキンソン発電所における実証試験は、顧客との信頼関係によって実現したものです。このようなイノベーションによって、Mitsubishi Power Americasの中核であるガスタービン事業は今後も成長すると確信しています。

再生可能エネルギープロジェクトの開発

Mitsubishi Power Americasの「エナジートランジション」部門は、ほんの小さな組織からは急速に拡大しています。この部門では、バッテリーエネルギー貯蔵(BESS)から太陽光発電システム、クリーンテクノロジーの事業開発まで行っていますが、何より今、私たちが注力しているのは水素です。

IRAのグリーン水素製造に対する3ドル/kgの補助金は、この技術への展望を一変させました。これは、Mitsubishi Power Americasがパートナーとともに米国のユタ州で参画している世界最大のグリーン水素製造・貯蔵施設となる水素ハブ(Advanced Clean Energy Storageプロジェクト)を建設する取り組みにとって、特に重要な意味を持ちます。

本プロジェクトでは、水電解装置により製造したグリーン水素を、岩塩空洞内の世界最大規模の施設に貯蔵するのですが、導入される水電解装置は、現在、世界で設置済の水電解装置容量に匹敵する220MWと、プロジェクトの大きさを物語っています。

また、岩塩空洞内に貯蔵された水素は発電所などの需要先で燃料として利活用されます。この貯蔵された水素を利用したGTCC発電プロジェクトにも三菱重工グループが関わっています。需要先であるインターマウンテン電力が石炭火力発電所の設備を更新し、GTCC発電設備に転換するプロジェクトに当社の水素焚きガスタービンが採用されたのです。プロジェクトでは、水素混焼率30%から運転を開始し、最終的には水素100%専焼を目指しています。

Advanced Clean Energy Storageプロジェクトは、IRAの成立以前から計画が進められていましたが、IRAの成立は、全米で水素ハブのネットワークを構築することが利益につながることを意味しています。実際、私たちは米国のいくつかの将来的な水素ハブのコンセプトペーパーの提出に成功しています。

より柔軟な発想

私たちは、お客様が進む先を見据え、新しいソリューションの開発と技術の商用化に努めていきますが、一方で、真の挑戦は、より柔軟な発想であると考えています。

三菱重工グループには誇るべきエンジニアリングとものづくりの歴史があります。これからも、市場のスピードに合わせた製品設計やプロジェクト管理を続けていかなければなりません。そのためには、異なる視点を取り入れ、リスクを管理しながら革新的なビジネスモデルを探し、最も早く効果的な方法を探さなければならないということです。

昨今、気候変動問題の深刻化や地政学的リスクなど、ビジネスを取り巻く環境は混沌としていますが、こうした時代においても、顧客のニーズは「クリーンなエネルギーを経済的かつ安定的に供給すること」であり、我々は引き続き、このニーズに応えていきます。

bill-newsom-500.jpg

Bill Newsom

President and CEO of Mitsubishi Power Americas

Spectra ニュースレター 新規登録はこちらから