成長するORC市場:世界にクリーンな熱と電力をもたらすターボデン

2025-02-21
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ターボデンは小さな所帯ながらも大きなパワーを備えたイタリアのエンジニアリング企業です。従業員数はわずか350人で、これは約8万人を擁する三菱重工グループの中では、小さな規模です。

しかしながら、専門とするクリーン電力システムにおいて世界をリードし、いまや真のグローバル企業となりました。当社はこれまで52カ国で、建設中のものを含めて450以上のプラント建設に携わってきました。急速に受注が伸びていますが、これは産業分野やユーティリティのお客様が当社に信頼を寄せているからだと考えます。

One of Turboden’s large-scale ORC systems at a geothermal plant in the US
米国の地熱プラントにおけるターボデンの大規模ORCシステム

当社の成功の鍵は、有機ランキンサイクル(Organic Rankine Cycle:ORC)システムの設計、設置、保守における他の追随を許さない専門知識にあります。このシステムでは、バイオマス、地熱、太陽エネルギーなどの再生可能エネルギーから、産業廃熱や従来の燃料まで、ほぼすべての熱源を使用して電力と熱を生みだすことができます。ORCタービンは従来の発電システムよりも小型で、一般的には1~40MWのレンジであるため、使用場所の近くに設置する分散型発電に最適です。

ORCとは、低~中温度の熱源を使用できる効率的な技術で、通常はドライ空冷式のコンデンサを備えています。また、特殊な有機流体(従来のランキン発電システムのように水ではないもの)を循環させるクローズドシステムであるため、錆びることがないなど、保守がより柔軟で簡単です。さらに、熱源が再生可能または廃熱であれば、CO₂を排出しないことが重要なポイントです。

地熱発電の推進

ミラノにあるイタリア最大の工科大学のエネルギー専門家であるマリオ・ガイア教授が開発し、1980年のターボデン設立の礎にもなったORCシステムは、現在では、セメント工場や製材所からバイオマス・廃棄物エネルギープラントに至るまで、あらゆるものに電力と熱を供給しています。用途に応じて10種類以上の有機流体を提供する幅広いカスタマイズ性と、充実したアフターサービスにより、ターボデンは年間2.5億ユーロ規模の市場の3分の1以上を獲得し、すべての大陸にプラントを納入して世界的なプレゼンスを確立しています。

さらに、最近注目を集めている石油・ガス業界のフラッキング技術を採用した革新的地熱システム (EGS) は、ゲームチェンジャーとなる可能性があり、ORC市場は年間4億ユーロまで拡大するかもしれません。昨年、EGSのパイオニアであり、三菱重工が出資しているファーボ・エナジー社と画期的な協業契約を締結しました。当社は、ファーボ・エナジー社がユタ州で開発するケープステーションに発電設備を供給しますが、この発電所は、当初は90MW、最終的には400MWのクリーンエネルギーを24時間供給する計画です。このような背景もあり、当社は米国で初となる支店の開設について検討しています。

もう一つ紹介したいのは、独自のクローズドループ地熱システムを開発したカナダのスタートアップ企業エバー社との協業です。このシステムは、カナダとニューメキシコ州のテストサイトで検証され、現在、ターボデンが発電設備を受注した最初の商業規模のプロジェクトがドイツで進められています。

熱を汲み上げる

このように進展が見られますが、依然ORCシステムはニッチな存在であり続けるでしょう。そのため、当社は最近、大型ヒートポンプ(Large Heat Pump:LHP)市場への進出を開始しました。LHPの市場規模は現在5億ユーロですが、2030年までに年間25億ユーロへと成長すると予想されています。電力網の脱炭素化が進む中、LHPを用いて電気で熱を発生させることが最先端の戦略になっているからです。LHPは、電力会社が地域暖房をクリーンなものにするのに役立つもので、現在、北欧で増加傾向にあります。

Schematic of a large heat pump for potential use in industrial applications
産業用途での利用の可能性を秘めた大型ヒートポンプの概念図

また、産業分野の顧客は、製造プロセス内で必要な熱の供給にLHPを利用することができます。私たちは、欧州の製紙工場で、170°Cの過熱蒸気を供給するLHPを建設中です。さらに最近は、LHPがCO₂回収システムに組み込まれ始めています。廃熱を利用して作動流体を再加熱することで、より高い効率でCO₂を分離することができます。これは、CO₂回収の世界的リーダーである三菱重工とともに顧客に高度なソリューションを提供することができる有望な分野です。また、特許を取得した独自の一体型ギアド・コンプレッサーも試験段階にあります。

様々な可能性に加え、LHPは新しい市場であることも魅力的です。確立されたサプライチェーンがないため、有機流体に関する当社の専門知識を活用することで、顧客のニーズに応じた高温対応の分野で強力なポジションを築くチャンスがあります。

イタリアの伝統とグローバルなポテンシャル

技術的なノウハウは、我々の製品群の基礎になっています。ガスエキスパンダーは、ガスパイプライン網のバルブに代わる特殊な装置で、圧力の違いを利用して発電することができ、インフラをより効率的なものにします。

高度な技術力は、常に私たちを象徴するものです。結局のところ、ターボデンはアカデミアから生まれ、創業者のガイア教授は今でも当社の名誉会長を務めています。同様に、北イタリアに受け継がれる強みも重要です。ここはイタリアの製造業とエンジニアリングの中心であり、サプライチェーンの中心です。

一方で、多国籍グループの一員であることは大きなシナジーをもたらしています。三菱重工グループの他部門の仲間と協力して製品を設計することはもちろん、三菱重工グループのグローバルネットワークを活用し、販売を増やし、米国子会社の設立などのように事業を拡大することが可能です。より広い視点では、長年培ってきた技術に最先端の知見を取り入れ製品に統合する、三菱重工の考え方は、当社のアプローチとも共鳴しています。

三菱重工グループの一員であることは、間違いなく当社の進歩を促し、製品のサイズをスケールアップし、効率を向上させるために投資を続けられるようリソースを与えてくれます。これにより、私たちはお客様に対し、これまで以上に幅広いクリーンエネルギーソリューションを提供し、我々自身の成長もさらに加速させることができます。私たちは、これからも挑戦を続けます。

Paolo Bertuzzi

Paolo Bertuzzi

Paolo Bertuzzi is the CEO & Managing Director of Turboden, an MHI Group company