倉庫オペレーションに革命をもたらす自動ピッキングロボット

2023-07-14

小売り分野(B to C)の電子商取引(EC)市場の規模は年々拡大しており、2022年の世界のEC市場は5兆7,000億ドルを超えました。また、2012年から2019年のB to C取引におけるECが占める割合(EC化率)は20%に迫っています。小売業の売上高全体の約5分の1をオンラインショッピングが占めており、今後も世界規模でB to CのEC市場拡大とEC化率の上昇が予想されています。

企業はB to CのEC市場の急拡大に後れを取らないよう、より効率的なサプライチェーンを構築する必要に迫られています。一方、流通業界では、労働者不足や作業負荷の増大といった社会問題も深刻化しており、効率化や労働環境の改善を目的とした倉庫の自動化が急速に進展しています。

自律的な搬送が可能なAGV

未来のスマート倉庫

倉庫の自動化として、AGV(Automated Guided Vehicle:無人搬送車)やAGF(Automated Guided Forklift:無人フォークリフト)、パレタイザー(パレットへの荷物の積み付け)、ピッキング(出荷指示に従い商品を集める)や梱包作業ができるロボットなど革新的な機器を導入することで、倉庫における入庫、保管から出荷までの一連の作業をシステム化することが可能です。

Amazonは2003年にAmazon Roboticsを設立して以来、50万台以上のロボットを導入しています。ロボットが自走して棚を持ち上げ、作業者がいるステーションに運び、作業が完了すると、ロボットが棚を戻します。また、ステーションには多くのカメラやスキャナー、モニターなどがあり、作業者をサポートします。これにより、少ない人数で巨大な倉庫を管理することができるのです。

三菱重工三菱ロジスネクストと共同で、横浜製作所に設立されたものづくりの共創空間「Yokohama Hardtech Hub」内にLogiQ X Lab(ロジックスラボ)を開設し、自動ピッキングソリューションの実証試験を開始しています。ピッキングの自動化を実現するには、AGV、AGF、パレタイザーなどを効率的に同調・協調させるシステムが必要です。LogiQ X Labでは、三菱重工が研究開発を進める「ΣSynX(シグマシンクス)」に基づき、ピッキング工程の自動化・知能化を目指しています。

様々な技術がどのように相互作用するかを検証するデモ施設

また、両社はLogiQ X Labにおいて、キリングループのキリンビバレッジ、キリングループロジスティクスと共同で自動ピッキングソリューションの共同実証を行っています。飲料倉庫は荷役作業の負荷が高いため、自動化により生産性の向上だけでなく安全性の高い労働環境の実現が可能となり、重筋作業やオペレーター不足などの物流現場の課題解決を目指しています。

AIの役割

物流業界においてAIと機械学習は、倉庫の需要予測、在庫管理、サプライチェーン計画などに既に広く使われている技術です。

また、自動音声認識技術は、ピッキングや梱包作業を効率化するために使用されており、スタッフは自身の手を使わずに作業を行うことができます。

これらのツールは、将来の需要予測や、倉庫内の商品を正確に追跡したり、商品保管を最適化したりする多くの倉庫管理システムの基盤にもなっています。

AIと連携した倉庫管理システムによる自動化は、顧客満足度の向上にも直結

ロボットやAIを活用したシステムの導入による自動化は、人手に頼っていた倉庫オペレーションに革命をもたらすでしょう。こうした革命は、人材不足や重い労働負荷といった社会課題の解決だけでなく、小口化・細分化・迅速化など、高度化する物流ニーズに対応したソリューションの最適解と言えます。自動化は、企業ひいては物流業界全体の持続的な成長への貢献にとどまらず、生活の一部をEC市場に頼る一般消費者にもメリットをもたらすのです。

ユワン・トンプソン

ユワン・トンプソン

ユアンは15年以上にわたってジャーナリスト兼編集者として、エネルギー産業のコモディティ、通信、農業、石油、繊維市場を取材してきた。

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