海の平和を守る、次世代の機雷探知機

2022-01-24
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「機雷」。その兵器は、大きな破壊力を持つだけでなく、安価で、設置がしやすく、探知も難しい。

その威力は凄まじく、第二次世界大戦以降、米国海軍の艦船を15隻も破壊。他の兵器の約4倍もの被害を生み出しています。

機雷のさらなる特長は、その費用対効果です。例えば1988年、米軍艦サミュエル-ロバーツ(FFG-58)はイラン-イラク戦争の最中に触雷し、その修理には9,600万ドルもの費用が注ぎ込まれました。その一方、機雷の準備にかかったのは、たった1,500ドル。わずかな出費で、大きな打撃を与えることができてしまうのです。

国連の専門家委員会によれば、最近はイエメンの長期内戦でも、フーシ派によって紅海に数十個の機雷が設置されました。これによる民間人の死者と貨物船の損傷がすでに報告されています。

紅海は海上輸送においても重要なルートであり、船舶往来の多いエリアです。こうした点も踏まえ、国連は「設置された機雷は、今後10年間は海軍艦艇や商船への深刻な脅威となり、さらには人道援助にも支障をきたすだろう」と述べています。

機雷探知の精度と安全性を向上させた三菱重工の水中無人機 「OZZ-5」
機雷探知の精度と安全性を向上させた三菱重工の水中無人機 「OZZ-5」

新たな機雷探知技術の開発

紅海という、海上輸送における重要な航路に機雷が設置され、その脅威は増大しました。しかし、こうした脅威は機雷探知に関する研究に拍車をかける形となり、現在フランスと日本の共同プロジェクトとして、最新鋭の機雷探知技術の開発が進められています。

そのプロジェクトの中で三菱重工グループは、フランスのタレスグループと協業。三菱重工の水中無人機(UUV)である自律型水中航走式機雷探知機「OZZ-5」に搭載する2周波ソーナー実証機の生産において提携しました。具体的には、高周波と低周波のソーナーの画像処理能力を向上させ、さらに双方から得られる情報を統合し、自動で検出および分類するという機能を付与することを目指しています。

これが実現できれば、機雷が海底に沈んでいようと、埋もれていようと、その位置も種類も正確に検知できる自律的な能力が追加されます。

機雷の威力は凄まじく、ときに、壊滅的な損害を船舶に与えることもある(写真提供:米国海軍Mass Communication Specialist 3rd Class Daniel Rolston)
機雷の威力は凄まじく、ときに、壊滅的な損害を船舶に与えることもある(写真提供:米国海軍Mass Communication Specialist 3rd Class Daniel Rolston)

無人での機雷排除を実現

米国海軍では近年、これまでのような有人の艦船や航空機を使用した機雷排除から、無人での作業へとシフトし始めました。無人艦船に搭載する機雷探知機や機雷を破壊できる半自動運転ロボットなど、無人機雷排除システムへの投資が進められています。

先述の三菱重工とタレス社で開発中のシステムも、日本と安全保障の協力関係にある国々での活躍が期待されています。このシステムなら、リアルタイムで対処することが可能であり、機雷の脅威に対する世界のニーズに応えることができるでしょう。

今後は、5カ年計画の一環として、開発中のシステムを用いた海上実験も実施予定。世界の貿易回廊を開放し、海上の人命を守る最先端技術が、必ずや実現されることでしょう。

三菱重工の水中無人機(UUV)「次世代の機雷探知技術を開発」はこちら

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キャサリン・ルーニー

主要なニュースメディアのジャーナリストとして20年以上の国際経験を持つ。専門分野は、エネルギー、インフラ、持続可能性、新興技術など。