駐車をストレスフリーにするパーキングロボット

2022-06-20
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世界初の自動バレーパーキング(自動搬送)ロボットである 「Stan(スタン)」 。フランスのベンチャー企業Stanley Roboticsが開発したロボットは、駐車場を利用する際のストレスから私たちを解放してくれます。

例えば、旅行に行くために、車で空港へ向かったとしましょう。到着して最初にぶつかる問題は、駐車スペースの確保です。10分以上ぐるぐると駐車場を回り続けても、駐車できるスペースは見つからない---そんな無駄な時間もStanがあれば必要ありません。駐車場の入り口近くで車を引き渡し、そのままターミナルへと直行する。そんなストレスフリーな体験が現実のものとなるのです。

ヨーロッパでは、仏リヨン-サン=テグジュペリ国際空港と英ロンドン-ガトウィック空港で既に導入されています。今後、空港での活用の他、自動車工場においても、完成した車両を製造工場からモータープールに移動する作業をロボットが担うことが期待されています。

ロボット駐車システムの仕組み

空港の駐車場を例に説明しましょう。旅行者は、空港駐車場に着いたら、そのまま車庫のような一室(バース)に車を進めて駐車します。あとは荷物を持ってバースの外へ出て、自動券売機で帰りのフライトの予約情報を入力するのみです。

旅行者がバースを出た後、Stanはバースに入室します。車両のホイールベースの長さに合わせて自動調整するプラットフォームにより、タイヤ部分を支えてゆっくりと車両を持ち上げ、バースから指定された駐車場へと搬送します。複数のセンサーを組み合わせた高度なセンサーフュージョン技術により、駐車車両、障害物、移動中の他ロボットとの衝突を避けて安全に駐車場内を動き回ることができます。

そして、Stanは旅行者が事前に入力した帰りのフライトが到着するタイミングに合わせて車両をバースへと移動させるので、旅行者は長時間のフライト後、トランクを引きずりながら、どこに止めたか忘れてしまった車を探す必要もありません。

車両の引き渡しから、ロボットの管理、駐車スペースの最適化、カスタマーサポートに至るまで一連のプロセスは、ソフトウェアによって自動化されています。また、Stanはバッテリー駆動で、仕事の合間を縫って自動で充電します。

ロボット駐車システムが提供するソリューション

Stanがあれば、ドアやトランクを開けるためのスペースは必要ありません。歩行者や他の車両を通すための通路も不要。車両1台あたりの駐車占有スペースを最小限に抑えることができます。その結果、同じ敷地面積の駐車場に収容できる車両の数は、従来の駐車場に比べて最大50%も増加可能です。

さらに、立体駐車場を建設する場合と比較すると、このロボット駐車システムは、短期間かつ低コストで導入することが可能です。COVID-19から景気が回復しようとする今、駐車スペースの効率化を実現する本システムの導入により、既存のインフラを活かして新しい収益機会を得ることができます。

ドアを開けるためのスペースがいらないため、敷地を有効活用することが可能
ドアを開けるためのスペースがいらないため、敷地を有効活用することが可能

完成車搬送にも貢献

車両を自動搬送し、効率的に保管してくれるStan。その活躍の場は、駐車場だけではありません。例えば、自動車工場から完成車を輸送するシーンでも注目されています。

一般的に、自動車工場で完成した新車は、ディーラーのもとへノンストップで届けられるわけではありません。工場内の駐車場で保管されたのち、キャリアカーに載せられて港に着きます。その後、船で運ばれ、各メーカーの保管場所へ。そこから発注分の台数がディーラーのもとに届けられます。この一連のプロセスにおいて、何度も自動車を運転するドライバーが必要となります。現在、ドライバー不足が問題視されている中、COVID-19を受けて生産台数を抑えていた反動もあり2021年の自動車製造台数は世界中で8,000万台以上にのぼりました。これに伴い、ドライバー不足はさらに深刻化しています。

そこで期待されているのが、Stanの活用です。ドライバーとStanで仕事を分担することで、少ない人数での効率的な完成車輸送が可能となります。また、Stanはバッテリー駆動のため、CO2排出量の削減にも貢献してくれます。工場の生産管理や在庫管理システムとStanの自動搬送システムが組み合わさることで、製造から輸送までの流れがシームレスに自動化される未来が訪れるかもしれません。

三菱重工グループは、Stanを開発したStanley Robotics社にいち早く注目し、2021年に業務提携をしました。Stanley Robotics社の魅力は、自律型自動車搬送ロボットであるStanに見られるような類まれな開発能力です。これに、三菱重工グループが機械式駐車場、交通流管制技術、および無人システム監視-管理技術で培ってきたノウハウを融合させることで、新しい市場の創出にも取り組んでいきたいと考えています。

近い将来、ショッピングモールや遊園地などの身近な場所でも、Stanと似たようなシステムを目にするようになるかもしれません。あるいは、自動運転機能を搭載した自動車が人を降ろした後、そのまま自分で駐車スペースを見つけて駐車する、そんな世界が実現するかもしれません。

駐車という身近なストレスから、私たちが解放される日もそう遠くはないでしょう。

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アンドレア・ウィレッジ

コミュニケーションのプロフェッショナルとして20年以上活動。テクノロジー、エネルギー、エンジニアリング関連など、多数の一流企業のコンテンツを制作。