日本が挑む、新たな宇宙開発競争
アポロ11号による月面着陸から50年。地球から最も近い衛星・月へ、人類は再び、足を踏み入れようとしています。
現在、アメリカ航空宇宙局(NASA)が進める有人月面探査計画「アルテミス」。2021年からロボット探査機を月へ送り出し、早ければ2024年にも、人類は再び月面に降り立つことが計画されています。しかしこれは、壮大な計画の序章に過ぎません。NASAは、月への長期滞在を実現させた上で、人類のさらなる飛躍を目指しています。それは、火星への有人ミッションです。
新たな宇宙開発に挑んでいるのは、50年前に熾烈な宇宙開発競争を繰り広げたアメリカ、ロシアだけではありません。日本をはじめ、インド、中国、アラブ首長国連邦など、多くの国が独自の宇宙開発計画を進めています。
日本も新たな宇宙開発に参画
各国が独自のプロジェクトを推進するだけでなく、国際的な協力体制も重要性を増しています。アルテミス計画においては、ヨーロッパ各国が密接に関わり、日本もまた、NASAとの連携を密にしています。
2019年秋には、NASAとJAXA(宇宙航空研究開発機構)が新たな協定を締結。アルテミス計画の一部として進められている月周回有人拠点「ゲートウェイ」や、月面探査に関わるミッションにおける協力の合意を発表しました。
これまで、国際宇宙ステーション(ISS)への宇宙飛行士派遣や、ISSの日本実験棟「きぼう」ならびにロボットアームの提供、定期的な補給ミッションなどを続けてきた日本。長きにわたる宇宙開発協力の成果が、今日のNASAとの協力体制につながっています。
火星進出の足がかりとして、月への長期滞在を実現する。未曽有の挑戦ともいえるアルテミス計画の中で、日本の研究者・技術者たちは今、新たな課題と向き合っています。
飛躍的な改良を目指して
その一つに、宇宙への補給や各種機器の運搬が挙げられます。三菱重工業株式会社(以下、三菱重工)は、現在ISSへ定期的に物資補給を行っている4つの宇宙船のうち、その一角を担う宇宙ステーション補給機(HTV)「こうのとり」に関わってきました。現在の「こうのとり」は、約6トンの食料・衣類・実験用科学材料・大型ハードウェアなどをISSへ運び、その後、不要となった資材やゴミを回収して地球へ帰還します。
しかし、計画中の月周回有人拠点「ゲートウェイ」、そして月面基地へと物資を輸送するには、HTVの飛行距離・積載量をさらに強化する必要が生じます。この先の10年に向け、ゲートウェイと月面基地への物資輸送力を高めるために、「こうのとり」と、新型ロケット H3の改良の検討が進んでいます。
宇宙輸送力が、未来の鍵になる
「こうのとり」の後継機として開発を進めているのが、新型宇宙ステーション補給機「HTV-X」。輸送能力は最大で約50%向上する見込みです。アルテミス計画の進展に合わせ、より多くの物資を宇宙へ届けて、多彩なミッションに対応することが可能となります。
さらに、H-IIロケットの後継となるH3ロケットは、従来の半分のコストで製造し、2021年初頭までの初打ち上げを計画しています。輸送する物資の量に応じ、さまざまな軌道で打ち上げられる予定です。三菱重工とJAXAは今後数年にわたり、地球や月の軌道上、あるいはさらに遠い宇宙空間で行うミッションに向け、H3ロケットとHTV-Xの最適化に取り組んでいきます。2030年までに、H3ロケットが、ローバー、居住モジュール、月面基地用資材など、最大12トンの物資を月まで輸送できるように増強されることを期待しています。
日本も参加する、火星へ向けた新たなミッション。人類が月や火星で生活し、日本の輸送機で物資が運ばれてくるのを毎週心待ちにする。そんな未来が、50年後には実現するかもしれません。
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