宇宙ビジネスと三菱重工

2018-08-31
H-IIB-In-Text-Image-HIGH-RES.jpg

国際宇宙ステーションへの物資の輸送

2003年以降、三菱重工業は宇宙航空研究開発機構(JAXA)と連携し、H-IIBロケットの開発と打上げに取り組んできました。

H-IIBの打上げは鹿児島県の種子島宇宙センターから行われ、2009年の1号機以来、これまで6回の打上げを全て成功させています。これらの成功に引き続き、2018年9月に7機目のH-IIBが打上げられます。

国際宇宙ステーション(ISS)に物資を運ぶための宇宙ステーション補給機(HTV)を搭載したH-IIBロケットは、ISSへの物資輸送の手段の一つとして欠かせないものとなっています。

「こうのとり」の愛称を持つHTVはJAXAが開発し、三菱重工がプライムとして参画したもので、ISS滞在中の宇宙飛行士へ生活必要物資や実験装置などを届けると同時に、ISSで不要となった廃棄物品をHTVに移送し、再突入軌道へ移行することにより廃棄する役割も担っています。

三菱重工の高い打上げ成功率

2005年以降、H-IIA/H-IIBロケットは39回連続で打上げに成功しており、全体の打上げ成功率は97.8%にも上ります。H-IIBロケットは、打上げ能力を高めるため、様々な改良が加えられています。 H-IIAの静止遷移軌道への打上げ能力が最大6トンなのに対し、H-IIBは8トンに達し、更にHTV軌道であれば16.5トンまで運ぶことができます。

H-IIAの静止遷移軌道への打上げ能力が最大6トンなのに対し、H-IIBは8トンに達し、更にHTV軌道であれば16.5トンまで運ぶことができます。

H-IIBは大幅な輸送力アップのために、第1段にはH-IIAでは1基であった第1段液体ロケットエンジン(LE-7A)を2基搭載し、H-IIA標準型で2本だったSRB-Aを4本装備しています。

打上げサービスの需要の高まり

このようにして、三菱重工は、絶え間ない技術開発により、高い信頼性と打上げ能力を実現させてきましたが、近年世界の宇宙ビジネスを取り巻く環境は大きく変わりつつあります。

宇宙に関連するビジネスは、かつては限られた機関に占められていましたが、昨今このビジネスに参入する民間企業はますます増え、いくつかの企業は専門性の高い技術力や経験の蓄積により、競争力を高めていますが、それはなぜでしょうか? 近年の宇宙分野における技術の進歩により、ロケット、人工衛星分野ともには部品や機器の複雑さが軽減され、それにより大幅なコスト削減も可能になりました。宇宙ビジネスへの参入を妨げていた技術とコストという大きな二つの障壁が取り除かれたのです。

人工衛星分野においては、気象情報やGPS情報など宇宙空間からもたらされる情報が日常生活で無くてはならないものになるほど、民間企業にとっては宇宙からの情報サービスを提供するビジネスチャンスが増えることになります。そして、従来のものより小型で低コスト、かつ高性能な人工衛星の開発競争が激しくなり、より多くの人工衛星を軌道上に投入して活用しようとするニーズも高まります。

この人工衛星活用需要の高まりが世界的なロケット打上げビジネスの拡大につながっており、打上げサービス分野で民間企業が打上げ能力、信頼性、コストでしのぎを削って競争を繰り広げるという現在の潮流を生んでいるのです。

三菱重工もそうしたロケット打上げビジネスの競争に加わっている企業の一つです。2007年のH-IIAロケット13号機より「打上げ輸送サービス」事業を開始し、日本政府から民間企業・海外政府向けにサービスを拡大してきました。更に2013年には、H-IIBロケットの打上げ輸送サービスも開始し、サービスの幅を拡げて来ました。このようにして、国際競争力を高めるために取り組んできましたが、次の大きな目標は次世代ロケットH3の開発です。H3はH-IIB以上の打上げ能力を目指しており、同時にローコスト化も達成させようとしています。

三菱重工は日本の宇宙ビジネスの先駆者として、今後も世界の競争の最前線に立ち、広がり続ける宇宙利用のニーズに貢献していきます。

author-placeholder.jpg

Mitsubishi Heavy Industries

Spectra ニュースレター 新規登録はこちらから