海運の低炭素化に貢献するフレキシブルな船舶燃料とは
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巨大な貨物船「Daisy Leader」は、車両約7,000台の積載が可能な自動車専用船です。海の上に一枚岩のようにそびえ立ち、世界中の目的地に向けて貨物を運んでいます。Daisy Leaderは、その大きさを除けば、特に際立ったところはないかもしれません。しかし、その船尾の表示「LNG POWERED」を見れば、この船が最新の低炭素化技術を採用した特別な船舶であることがわかります。
この船には、二元燃料エンジンが搭載されており、従来の船舶燃料もしくはLNG(液化天然ガス)などの代替燃料のいずれかを選択して運航することが可能です。この燃料の切り替えを容易にするのが、三菱重工グループの三菱造船が製造したLNG燃料ガス供給システム(FGSS)です。FGSSが提供するフレキシビリティ(柔軟性)により、運航者は常に最適なオプションを選択できます。これは、海運業界に示された低炭素化への道筋と言えるのです。
![The LNG-fueled vehicle carrier, Daisy Leader](https://images1.cmp.optimizely.com/assets/The+LNG+fueled+vehicle+carrier+Daisy+Leader.jpg/Zz1mMzVhZjM1ODk1YzAxMWVmYTczNzQ2NDFhYzBmM2VjMA==)
海運業界の低炭素化への一歩
海運業は、世界の貿易財の約90%を輸送していることから、よりクリーンな海運が極めて重要です。しかし、この業界は世界の温室効果ガス排出量の約3%を占めており、これらの排出量はわずか10年間で20%も増加しています。そのため、海運会社は業務効率化と、国際海事機関(IMO)や顧客が求める規制値や目標値の遵守とのバランス調整に取り組んでいます。
現在の電化技術や、1日に数万ガロンの船舶燃料を必要とする貨物船への電力供給に関する課題を抱える海運業にとって、低炭素化は難しい問題です。大型船が大洋を航海するのに十分な大きさのバッテリーは現時点では存在せず、他の技術を商業規模で開発する必要があります。そのような理由から、国連貿易開発会議(UN Trade & Development)によれば、世界の船舶の約99%は依然として重油などの従来燃料に依存しています。
そこで、海運会社の世界経済における重要な役割を妨げることなく、炭素削減海運に向けた重要な一歩を踏み出す機会を提供するのが、従来燃料と代替燃料(炭素含有量の低いLNGやカーボンフリーのアンモニアなど)のどちらも使用可能な二元燃料エンジンです。
![Ammonia-powered ships are under development at several shipyards](https://images2.cmp.optimizely.com/assets/Ammonia+powered+ships+are+under+development+at+several+shipyards.jpg/Zz1mMzVhOGU3Yzk1YzAxMWVmOTdkNWQ2ODU4OGMyYjAzNQ==)
注目される代替燃料
このような背景において二元燃料エンジンの市場は大きく成長しています。2030年には、船舶用エンジンの85%が二元燃料になるとの予測もあります。(2023年の自動車専用船の新規受注では、75%以上がLNG二元燃料エンジン)
S&Pグローバルによると、LNGは現在、世界の二元燃料船で最も一般的な選択肢であり、需要は今後も「堅調」に推移するとされています。これは、競争力のある価格設定、豊富な供給、世界中に約200カ所のLNGバンカリング拠点が整備されているインフラなどの要因によるものです。
LNGを燃料とすることで、海運ではPM(粒子状物質)やSOX(硫黄酸化物)排出量が大幅に削減されますが、これはLNGが硫黄をほとんど含まないことに起因します。さらにCO2排出量は最大25%の削減、NOX(窒素酸化物)排出量も削減されます。また、コストと効率の面でもメリットがあります。
一方、メタノールはコンテナ船やロールオン・ロールオフ貨物船(RORO船)を中心に、業界で注目されています。三菱造船はこのほど、日本で初めてメタノールを燃料とするRORO船を受注しました。この船は、重油船に比べてCO2排出量を10%以上削減する高性能二元燃料エンジンを搭載しています。将来的には、このようなエンジンにグリーンメタノールを使用することで、さらに排出量を削減できる可能性があります。
また、燃焼してもCO2を排出しないアンモニアも、船舶燃料として注目され始めており、アンモニア二元燃料エンジンを搭載した初の船舶も出現しつつあります。三菱造船は、「NH3 POWERED」を表示する大型アンモニア運搬船の開発を、業界のパートナーと協力して推し進めています。
![FGSS modules, such as that fitted on the cargo ship Daisy Leader](https://images4.cmp.optimizely.com/assets/FGSS+modules%2C+such+as+that+fitted+on+the+cargo+ship+Daisy+Leader.jpg/Zz1mMzViNjU5YTk1YzAxMWVmODg0MTVhMTkxMjlhZGQ2Zg==)
豊富な経験に基づいた信頼性の高い技術
船舶のエンジンに代替燃料を確実に供給することが、船舶用二元燃料エンジン技術の重要な側面になります。三菱造船のFGSSは、同社のLNG運搬船建造における豊富な経験を生かして設計されています。
このシステムを構成するのは、FGSSモジュール、LNGを船内に貯蔵するための燃料タンク、そして陸上施設やバンカリング船からLNGを受け入れる設備です。省スペースでメンテナンスが容易な設計で、船の要求に合わせてカスタマイズできる制御システムを備えており、操作性と安全性を実現しています。
同社はこれまでに26基以上のFGSSを受注しており、最近では株式会社ジャパンエンジンコーポレーション(J-ENG)からアンモニア燃料供給装置(AFSS)も受注しました。これは将来の船舶燃料としてのアンモニアの利用を促進するものであり、ひいては海洋インフラの脱炭素化を推し進めるものとなります。
業界が脱炭素化というパズルのピースをはめ込んでいく中、FGSS・AFSSは二元燃料エンジンと共に企業のネットゼロ移行を支援することになるでしょう。
三菱造船のソリューション「LNG燃料ガス供給システム(FGSS)」はこちら
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