COVID-19で急増したプラスチック廃棄物にAIをいかに活用できるか
インデックス
COVID-19の環境への影響を評価することは決して容易ではありません。
各国のロックダウンにより、世界のCO2排出量は大幅に減少し、エネルギー需要の様相は劇的に変化しました。ある調査によれば、2020年4月のCO2排出量は1日あたり前年比17%減少しています。しかしながら、経済活動の回復に伴い、排出量は再上昇しています。
他方、近年世界中で進んでいた使い捨てプラスチックの削減に向けた取り組みが、COVID-19の流行により後退したように思われます。オンラインショッピングや配送サービスの包装材の使用量が記録的に増加したこと、そして、外食需要が減少しテイクアウト主流となったことが主な原因とされています。
こうした流れの中で生まれる廃棄物の多くはリサイクル可能です。しかしながら、昨今、増大している使い捨てプラスチックの発生源として、廃棄された個人用保護具(PPE)が問題になっています。医療スタッフが使用した使い捨ての手袋、ガウン、フェイスマスクといったものはウイルス蔓延の恐れがあるため、リサイクルできないのです。
急増する医療廃棄物
中国・湖北省でCOVID-19が大流行した際、感染性医療廃棄物は600%増加し、1日240トンに達した結果、あっという間に廃棄物輸送・処分のインフラが圧迫されました。この問題を放置すれば、世界の他の都市のリソースも同様に限界に達する恐れがあります。
アジア開発銀行の調査によると、東南アジアの一部都市では、最大で1日1,000トンの新たな医療廃棄物が発生しうると見込まれています。この種の汚染された廃棄物には、リサイクルの選択肢はありません。持続可能で衛生的な、処分方法が求められているのです。
世界中で廃棄されたPPEの多くは河川や海に流れ込み、プラスチックによる生態系破壊の進行を加速させます。世界自然保護基金の報告書によると、全体の1%のマスクが不適切に廃棄されることで、毎月約1,000万枚ものマスクが環境を汚染することになるのです。
ここで、廃棄物からのエネルギー回収(Waste to Energy)施設について、考えてみましょう。これらの施設は、廃棄された製品を衛生的に処理し、その上で、プロセスから回収した熱を用いて、ボイラや蒸気タービンにより発電を行っています。
都市が直面する燃料問題
使い捨てプラスチックであるPPEは、毎日の家庭ごみから産業廃棄物までの、数多くの廃棄物のうちのひとつに過ぎませんが、Waste to Energy施設で燃料として使用することが可能です。廃棄物の組成やWaste to Energy施設でのエネルギー回収のための処理の効率性には、さまざまな要因が影響します。例えば、雨の日にはゴミの収集過程で水分が多く含まれるため、廃棄物を燃やしづらくなります。同様に、使い捨てPPEによる廃プラスチックの増加は、廃棄物の燃焼特性を変化させます。
Waste to Energy施設では、廃棄物を焼却により衛生的に処理し、回収した熱によりボイラや蒸気タービンを用いて発電している。
廃棄物は、焼却燃料として様々な大きさ・形状・硬さをもつため、Waste to Energy施設では、緻密な調整システムとオペレータによるきめ細かな監視が必要となります。プラントオペレータは、これらの異なる条件に注意を払い、燃焼プロセスの安定運転を保つために調節しなければなりません。これらのことを可能な限り最も効率的に行うことは、プラスチック廃棄物の急増という問題に直面する多くの都市にとって、極めて重要なことなのです。
AIによる効率化の取り組み
いかなる廃棄物が処理されようとも、燃焼・発電効率を最適化するために、一部のWaste to Energy施設ではAI(人工知能)が活用されています。
当社グループの三菱重工環境・化学エンジニアリング(MHIEC)では、Waste to Energy施設の運転にAIを活用した自動制御システムを導入。各種センサと接続されたAI・IoTを用い、オペレータの経験知の分析、運転最適化、円滑な運転の維持を図っています。
このシステムを導入しているWaste to Energy施設では、炉内の燃焼状況をカメラで監視し、画像をAIで解析しています。廃棄物が生み出す蒸気の発生量をAIで予測し、炉内の廃棄物と空気量を適切に制御することで、焼却炉を最も効率の良い状態に保つことができるのです。
この自動制御システムにより、様々な廃棄物から最大限のエネルギー回収を実現しています。PPE やリサイクル不能な包装材などの処理において、多くの都市が採用可能な、最も持続可能な手法であり、COVID-19による大量のプラスチック廃棄物の問題の取り組みに寄与するものです。
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