次世代人工衛星が命を救う その方法とは?
気象パターンがめまぐるしく変化する今日、高度な気象観測技術に対するニーズが高まり、自然災害の危険が迫る地域住民に速報を届ける公共サービスを求める声も多数生まれています。水蒸気が立ち上り、嵐が起こっているまさにその時に最新の詳しい情報が手に入れば、迅速な対応や避難指示を開始し、命を救うだけでなく物的損害を減らせる可能性も生まれます。
気象庁が運用する静止気象衛星「ひまわり9号」は、2016年11月初旬、種子島宇宙センターから打ち上げに成功した衛星で、この衛星の役割は、台風、火山灰や噴煙、霧、低雲などについて、これまでよりも詳しい情報を提供することです。詳細な情報の恩恵を受けるのは、いつも空ばかり見ている気象学者たちだけではありません。前もって警鐘を鳴らし、危険を回避するだけの十分な時間的猶予をもたらすことができれば、普通に暮らす一般市民も救われるのです。
ひまわり9号は、1977年から代々名称を受け継ぐ「ひまわり」と名付けられた人工衛星の最新バージョンです。初代からずっと、気象状況の解明にあたり一段と精度の高い情報を提供し続けており、日本だけでなく太平洋全域の気象学者が利用しています。2016年2月、南半球史上最大のサイクロン「ウィンストン」が最大瞬間風速約80メートルでフィジーを襲い、数千世帯を停電に追い込んだ際、一代前のひまわり8号がその能力を存分に発揮して気象データ観測に大いに役立ちました。同じように、ひまわり9号も素晴らしい価値を提供してくれると期待されています。
気象学者がリアルタイムで受け取ったひまわりからの画像データは、人々を危険から守るべく対策を講じる上での助けとなります。気候変動が地球を脅かす昨今、こうした詳細かつ高精度な情報に基づいた警告は重要性を増す一方です。
三菱重工業と宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、気象庁との協力のもと、ひまわり9号を打ち上げました。三菱電機が製造したひまわり9号は、現在稼働中のひまわり8号を軌道上でバックアップする役割を担っています。
これら2機の衛星は、東アジアと西太平洋全域の画像を10分毎に取得することができます。従来の運輸多目的衛星(MTSAT)では、データの更新に30分の時間を要していました。つまり今では、以前より迅速な災害対策が可能で、大規模自然災害の発生時に短時間で行動を起こすことができるのです。暴風雨や台風のリスクが生じた際、ひまわり9号から受け取る観測データに基づいて、地域住民はより余裕を持って避難が出来、被害を最小限に抑えることに繋がります。大きな進歩を遂げた気象観測技術が、命を救うこととなるのです。