SFの世界から物流倉庫の現場へ:ロジスティクスの安全性向上に役立つ3つの作業ロボット
半世紀前、生産ラインにロボットアームが登場して以降、自動化が進みました。その進化を目の当たりにし驚嘆した人もいれば、ロボットに仕事を奪われる恐怖を感じた人もいたことでしょう。そして現在、このアルゴリズムと自動化プロセスが世界に与える影響は、想定を上回るものとなりました。
自動化が進むことによって、物流倉庫の業務効率が格段に向上するとともに、人間にとってより安全な環境をつくりだすことができます。そして今、新型コロナウイルスの大流行で、この変革が進んでいます。
以前から、ロジスティクスの自動化に関する世界市場は、2017年の457億ドルから、2024年には1,010億ドル超にまで成長すると予測されていましたが、新型コロナウイルスの大流行を受けて、安全性の確保という観点で、自動化システムの導入は新たな価値を持つこととなりました。ロボットを活用すれば、従業員同士の接触頻度を減らすことができるだけでなく、従業員はより価値の高い仕事に専念することができるようになります。
無人の状態で稼働する工場や倉庫というSFの世界は、人工知能 (AI) やIoT関連の技術が進歩したことで、急速に現実味を帯びることとなりました。とはいえ、細かい部分で人間によるチェックを欠かすことはできず、現状では全ての作業をロボットに任せることはできません。
さて、ここからは3つの作業ロボットを例に、自動化システムがロジスティクスの安全性向上にどのように役立つのかを見ていきましょう。
1. 無人フォークリフト(AGF)用AI
物流量の多い倉庫環境では、自動ルート最適化システムにより、進行の妨げとなる障害物の検出や、他AGFの進路を予測することで混雑したエリアを避けることができ、より安全かつ効率的な作業が可能となります。
新型コロナウイルスの大流行を受けて、安全性の確保という観点で、自動化システムの導入は新たな価値を持つこととなりました。
三菱重工グループの三菱ロジスネクスト株式会社では、AGF用の自動ルート最適化システムをすでに開発しており、現在は、有人フォークリフトにおける知能と安全性の向上に目を向けています。たとえば、手動フォークリフトの運転手が死角にいる人を検知し、回避することができる自動システムを開発。これには、顔認識技術を利用しています。
また、同社では、フォークリフト・トラブルシューティングシステム(L-SAS)というスマートメンテナンスシステムも開発、フォークリフト故障時の迅速なトラブルシューティングを可能にしています。L-SASのデーターベースには過去のトラブルシューティング事例とともに図面や各種技術資料が保管されており、AIが想定原因を絞り込むことで解決策を短時間で特定することが可能となります。
2. ロボット型スクラバー(床洗浄機)
新型コロナウイルスから従業員を守るためには、工場が清潔でなければいけません。そのために、ロボットの自動運転技術を専門とするAI企業と、産業用清掃製品のメーカーが提携し、新たな開発を進めています。
テナントカンパニー社は、ソフトウェアプラットフォーム「BrainOS」を搭載したロボット型スクラバー(床洗浄機)を発売。有人環境化においても安全に作業できるようになりました。
スクラバーは、清掃作業員が倉庫に入る必要性をなくすだけでなく、床が滑りやすくなるリスクを軽減し、倉庫内の床を無菌状態に保ちます。また、スクラバーの位置を特定するための特別な工事やGPSを必要とせずAIが人間の作業員や障害物を自ら判断して、自律運転することができます。
3. ピッキングロボット
小売業者やそのサプライヤーは、倉庫内における従業員間のソーシャルディスタンスを確保するために、商品の取り出しを行うピッキングロボットに多額の投資をしています。たとえばAmazonは2012年より、配送センターやフルフィルメントセンターでのロボット利用を推進。現在、20万台以上のロボットが、従業員とともに活躍しています。
そしてこのロボット導入の流れは、新型コロナウイルスの大流行によって、さらに加速。ファッションブランドのGAPでは、オンライン注文時に稼働するピッキングロボットの数を、現在の3倍となる計106台にする計画を発表しています。
このロボットが搭載しているアルゴリズムは、ロボットの視覚と動きを制御し、リアルタイムで周囲の状況を判断し、正確に注文品を取り出します。1台につき、従業員4人分の作業能力を有するため、ロボットが増えることで、従業員の接触頻度を減らし、ソーシャルディスタンスを保って働ける環境を整えることができます。
三菱ロジスネクストの無人フォークリフト(AGF)