航空機の翼から宇宙機器まで金属3Dプリンターの可能性を広げる新技術

2019-09-09
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金属3Dプリンターの世界は日進月歩で、その可能性は無限に広がっています。最新の動向について、三菱重工工作機械株式会社の最高技術責任者である二井谷春彦氏にお話を聞きました。

Q.御社の革新的な技術開発によって、金属3Dプリンターの世界は一変しました。御社の製品の独自性について教えていただけますか?

当社金属3Dプリンター"LAMDA"の設計の鍵となるのは、独自開発したモニタリングフィードバックシステムです。当システムは、積層造形をリアルタイムで監視して、監視結果に基づいてレーザー出力や金属供給量などの条件を自動で制御・最適化し、高い品質の部品をつくり出すことを可能とします。現在、積層造形後の部品サイズや形状測定は簡単にできますが、品質の安定性については部品を破壊して確認する方法が用いられています。当社が独自開発したこのシステムを使用することで、近い将来、完成品を破壊せずに品質保証できるようになると考えています。

Q.本製品に採用されたその他の最新技術について教えてください。

この金属3Dプリンターは、ノズル先端から金属粉末を噴射し、レーザーを照射して溶融・凝固させる、DED方式(Directed Energy Deposition: 指向性エネルギー堆積法)を採用しており、ノズルには独自開発した"ローカルシールドノズルシステム"を搭載しています。このシステムは、溶融・凝固時に、ベールのような膜で酸素流入を遮断して金属の酸化を未然に防ぐため、チャンバーなどの囲いが不要となり、小型の部品のみならず、航空機の翼など大型部品まで、幅広い部品を造形することができます。

Q.この技術は世界中どこでも活用できるのでしょうか?

金属3Dプリンターの技術は非常に新しく、ISOなどの品質基準が存在しません。業界では基準の整備を進めています。早期に基準が整備され、1日も早く、当社の金属3Dプリンターが活用される日が来ることを心待ちにしています。

Q.この技術は主にどんな用途で使用されるのでしょうか?

この金属3Dプリンターは、何種類もの金属を組み合わせることが可能であるため、これまで造形できなかった物をつくれる可能性があり、チャンスは無限に広がります。まずは、この新しいプリンターが、航空機部品や宇宙産業関連で使用されることを期待しています。また、技術が高度になり、コストが従来の製造技術と同程度になれば、自動車などの商業分野でも活用されるようになるでしょう。今後も、技術向上に努め、世界を驚かすような新たなものづくりを提案していきたいと考えています。

初号機を滋賀県工業技術総合センターに納入"金属3Dプリンター"の商用モデルを製品化

ジョニー・ウッド

ジョニー・ウッド

ジャーナリストとして、15年以上にわたりアジア、ヨーロッパ、中東の世界各地で活動。多くの特集記事執筆のほか、数々の一流ライフスタイル誌や企業出版物を編集。