ロケット打上げ技術の進歩がもたらす宇宙ビジネスの拡大
インデックス
アメリカ航空宇宙局(NASA)によると、約60年前の宇宙開発の始まりから現在に至るまで約6000機を超える人工衛星が地球の周囲の軌道上に送られてきたそうです。さらに、米国の衛星産業協会の発表によると、2012年から2016年の間に打ち上げられた衛星の数は、年間平均144機に上り、これは2007年から2011年の5年間と比べると53%増加したということです。このように宇宙関連ビジネスは世界的に拡大し続け、その経済規模はいまや約37兆円にも達します。
かつて、宇宙に関連するビジネスは限られた超大国だけが手掛けていました。しかし、今日では世界各国にとって宇宙は重要な経済活動の場となっており、運用中の衛星を自ら所有して活用中の国や企業は増加の一途をたどっています。これだけの成長拡大を続けながら、更に以下のような社会的ニーズもあり、衛星の打上げ能力向上の要求が益々高まり続けています。
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どこでも快適な通信を 電波の届かない地域をなくし、国境を越え、どこでも快適なモバイル環境を実現して、これまで相互にアクセスすることができなかった地域間の通信も可能とする。それによって、人々を強くつなげ経済発展を実現する。
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データ通信の混雑解消 増え続けるユーザー数にも対応でき、ビデオ、ゲーム、VRやARなど膨大な通信量を要するアプリもスムーズに使うことができる大容量ネットワークの実現。
宇宙ビジネスが拡大と進歩の新時代に入っている今日、宇宙探査や打上げサービスにおける世界の宇宙ビジネス先進国としての地位を確立するため、日本は柔軟性や信頼性に優れた打上げ技術の開発に積極的に取り組んでいます。
高い柔軟性と信頼性、ローコスト化
三菱重工業は、長年にわたり宇宙航空研究開発機構(JAXA)と連携し、宇宙ビジネスの中心で活動してきました。2007年からH-IIAロケットによる打上げ輸送サービスを開始し、2013年からはH-IIBも打上げ輸送サービスのラインアップに加えています。
そして、H-IIA/H-IIBに継ぐのがH3です。H3は日本の新しい基幹ロケットで、2020年には初号機の打上げが予定されています。H3のミッションは、衛星の打上げや探査機を宇宙に輸送することであり、H3の登場で、平均年間打上げ数は現在の2倍以上になると期待されています。これにより三菱重工が宇宙ビジネスの最前線に立ち続け、世界的な地位を向上させていくことを目指しています。
H-IIA/H-IIBは、これまでの実績により安全性と信頼性で高い評価を得ており、特にオンタイム打上げ率は高く、コストキープにもつながるということでお客様に非常に満足頂いています。これをうけて、H3の開発チームは、オンタイム打上げ実績やコストキープといったこれまでの強みを維持しつつ、さらに次世代の衛星打上げに求められるレベルの高さに応えるべく取り組んでいます。
更に、H3は複数の機体形態を準備し、利用用途にあった価格・能力のロケットを提供するという柔軟性の高さを最大のメリットとしており、それにより幅広い打上げニーズに応えます。また価格面においてもシステムのモジュール化 組立点検作業の自動化の推進や民生部品の利用で低価格化を実現します。
H3の中でも特に強化されるのが、シンプルかつ信頼性の高さを目指した第1段エンジンLE-9で、この新型エンジンには、H-IIAの第2段エンジンLE-5Bの燃焼システムが生かされています。
また、H3ロケットは、第1段エンジンは(LE-9)2基または3基、固体ロケットブースターは(SRB-3)0本、2本、または4本が選択できる柔軟性を持っており、ペイロードや軌道のニーズに応じた調整が可能です。静止遷移軌道までの打上げ能力は現在のH-IIA/H-IIBをはるかに上回ります。
迅速さと高いコストパフォーマンス
衛星を所有、運用している国々は今でこそ多くありますが、ほんの数年前までは、宇宙ビジネスへの参入には非常に高い障壁がありました。しかし、近年その高い障壁が次第に取り払われ、多くの国や民間企業が宇宙ビジネスに参入し、大きく発展・拡大してきました。これから先、国も民間企業も、迅速でコストパフォーマンスのより高い打上げサービスへの要求を高めていくと考えられます。そのニーズに応えて宇宙ビジネスの拡大に寄与すること、それが三菱重工の目標です。