航空業界の飛躍:三菱重工の航空エンジン事業が切り拓く持続可能な未来

2026-01-13
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人は誰しも空を飛び、旅をして新しい世界を探検し、人と繋がりたいと願うものです。そして現代の空の旅は、その願いを叶える最も効率的で時には唯一の実用的な手段です。

このことは数字にも表れています。2024年、世界の航空交通量(RPK:Revenue Passenger Kilometers)は前年から10%以上増加し、コロナ禍前の2019年のピークを上回りました。今年に入ってからもRPKは5%増加し、国際線は7%、アジアの航空会社はほぼ10%の伸びを示しています。

RPKの増加と世界のGDP成長率には強い相関関係があり、RPKは毎年数ポイントずつ拡大しています。数年前、航空業界も揺るがしたCOVID-19のパンデミックは、すでに過去の出来事のようであり、私たちの主力事業である航空エンジン市場は今後20年間で倍増するという予測にも確信を持ちつつあります。

一方で、航空業界は世界の温室効果ガス排出量の約3%を占めるため、脱炭素化の圧力も高まっています。スウェーデン発の「フライトシェイム=飛び恥」運動のように、航空旅行の大幅な削減を求める声もあります。しかし現実的には、収益性の高い産業における排出量削減の最も効果的な方法は、生産性の効率向上と低炭素技術への投資を続けることに他なりません。

すでに、GTF(Geared Turbo Fan)™エンジン、高圧力比コアエンジン、高バイパス比・ターボファン・エンジンの導入により燃費効率が大幅に向上し、新世代エンジンは2桁台の燃料消費率削減を実現しています。次のステップとしては、使用済みの食用油やバイオ廃棄物から生成される持続可能な航空燃料(SAF)と従来のケロシンというジェット燃料を混ぜて、既存エンジンを運航することです。航空業界において長期的には、電気や水素を動力とする推進システムの開発にも取り組んでいますが、当面は小型・短距離機に限定される見込みです。

Aero engine

パートナーシップで築く未来

三菱重工航空エンジン株式会社(MHIAEL)の使命は、最先端かつ高効率なエンジンの設計・製造を通じて、航空業界の成長と持続可能性に貢献することです。膨大な先行投資と研究開発、さらに長期にわたる運用リスクを伴うエンジン事業で成功するためには、パートナーシップが欠かせません。

MHIAELは、単なるサプライヤーではなく、ほぼすべてのエンジン事業において、リスクと収益を共有するパートナー(RRSP)またはジョイント・ベンチャー(JV)パートナーとして参画しています。例えば、世界で最も人気の高い狭胴機、エアバスA320neoファミリーに搭載されるプラット・アンド・ホイットニーのPW1100G-JMエンジンシリーズでは、米国、ドイツ、日本から5社が参画するJVの一員です。

また、ロールス・ロイス社との協業は、ボーイング787ドリームライナー、A330neo、A350XWBといった広胴機用トレントエンジンの3つのプログラムにまたがり、一連のRRSPとして参画しています。

これらのプログラムでは、各パートナーが持ち分に応じて収益とリスクを分担し、IHI、川崎重工業、三菱重工といった日本の三重工が約4分の1のシェアを占めています。さらに、それぞれの企業がエンジン部品の一部の設計・製造を担当しています。

私が「エンジンの心臓部」と呼ぶ燃焼器と燃焼室は、燃料と高圧空気を混合して点火し、高温の排気ガス発生させタービンを駆動します。三菱重工グループ(MHI)は発電所向け大型ガスタービンの世界トップメーカーであり、その技術力がこうした重要な部品の設計・製造の鍵となっています。また、MHIの総合研究所とも連携し、技術的優位性を確保しています。

自動化が支えるものづくり

もう一つの強みは、拠点である名古屋と長崎において部品生産とMRO(Maintenance(整備), Repair(修理) and Overhaul(オーバーホール))の両面で積極的に投資を行い、高い品質基準を維持していることです。MROでは、世界の主要な航空当局からの承認をスムーズに得ています。

特に、PW1100G-JMの燃焼器を製造する長崎の新工場は、5年前に完成したMHIで最も先進的な工場です。全長280メートルの建屋内には、高速レーザーや高圧ウォータージェットを用いて、燃焼器のニッケル合金に数千もの穴を高速かつ正確に開ける工作機械が並びます。50台以上の機械はレールの上を移動するロボットにより、適切なドリルヘッドと部品が自動で装着されます。

一方で、現場監督者は携帯電話で機械の稼働状況や月間生産目標の進捗、その日の電力消費量などを管理しています。原材料や仕掛数量を確認したり、工具など間接材の管理も出来るようになっています。同僚の日本マラソン界におけるトップランナーである近藤亮太選手の最新レース結果についてフォローしたりしています。

A factory on autopilot

成長を支える未来への投資

市場の拡大のみならず、PW1100G-JMのような新規のエンジン事業において、スペアパーツ(補用品)や整備事業が収入を出し始めており、将来性を確信しているところです。こうした分野は最も収益性が高く、40年以上にわたり続く可能性があるため、MRO事業も着実に拡大して行くと考えられ、MHIAELは今後も設備への投資と拡張を続け、成長を支えていきます。

さらに、私たちはエンジン事業でのワークシェアを拡大しており、技術力とサービス実績に基づいてこの傾向は今後も続くと見込んでいます。人々がこれからも空を飛び続ける限り、MHIAELも共に飛躍していきたいと考えています。

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牛田 正紀

牛田 正紀

三菱重工航空エンジン株式会社 取締役社長