再生可能エネルギーから水素を貯蔵する4つの方法
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水素経済、水素社会、水素燃料電池...。周期表で一番目の元素である"水素"は、ここ数年、世界的な流行語となっています。2050年までにゼロエミッションを目指す世界的な取り組みの中で、2つの重要な課題を解決する可能性を秘めているからです。
第一に期待されているのが、再生可能エネルギーで長年の課題とされてきた「間欠性」の解決。再生可能エネルギーは、風力や太陽光といった自然の力を利用しますが、風は常に吹いているとは限らず、太陽は常に出ているとは限りません。そのため再生可能エネルギーは、安定的なエネルギー供給が難しいとされてきました。
しかし、風の強い日や、よく晴れた日に発電された余剰電力を水素に変換することで、水素が一時的なエネルギー貯蔵媒体としての役割を果たし、エネルギーを貯蔵できるようになります。これにより、エネルギー需給の変化にも柔軟に対応することが可能となります。
第二に期待されているのが、脱炭素化への貢献です。炭素排出量の多い製鉄・セメント製造といった重工業や、家庭暖房などの分野で、水素の活躍が期待されています。
これまで、気候変動対策として水素を活用する上で、ひとつ大きな壁がありました。それは、水素自体の貯蔵が技術的に困難であるということです。この記事では、その問題を解決しうる4つの水素貯蔵ソリューションを、順にご紹介します。
1.地質学的貯蔵
米国ユタ州での建設が発表された、世界最大のエネルギー貯蔵プロジェクト「先進的クリーンエネルギー貯蔵」。将来の脱炭素型電力網に不可欠な技術を実証する取り組みです。プロジェクトでは、再生可能エネルギーから生成された水素の余剰分を、地下の岩塩洞窟に貯蔵。一つの洞窟に、150GWhものクリーンエネルギーを貯蔵するために必要な再生可能水素が入る見通しです。
三菱パワーは、このプロジェクトで、余剰再生可能電力を「グリーン水素」に変換する技術を提供予定。すでに、ガスを岩塩洞窟に貯蔵する技術は確立済みで、その技術を水素にも転用できることが分かっています。また、岩塩洞窟のほかにも、枯渇した油田やガス田、帯水層などを活用した地質学的貯蔵も、有効な方法の一つとして考えられています。
2.圧縮水素
水素は他の気体と同様に、圧縮された状態でタンクに貯蔵され、必要に応じて使用されます。しかし、水素の体積は他の炭化水素に比べて非常に大きく、たとえば天然ガスの約4倍。そのため、実用化する際にはさらに圧縮する必要が生じます。燃料電池車で使用される水素が、大型の高圧タンクで圧縮されているのがその一例です。
使用用途によって、圧縮水素をさらに圧縮する必要がある場合には、液化させるという方法もあります。また、圧縮・液化の2つの技術を組み合わせることも可能です。
3.液化水素
三菱重工グループは長年にわたり、宇宙産業分野において、ロケット燃料として液化水素を活用してきました。しかし、液化水素の貯蔵は技術的に非常に難しく、コストも嵩んでしまいます。液化水素を貯蔵するには、-253℃(ほぼ絶対零度)まで冷却した上で、断熱タンクで低温を維持し、蒸発を最小限に抑えなければいけません。
こうした技術的な複雑さとコストによって、液化水素は限定的な場面でしか使われてきませんでした。しかし今後、再生可能水素が普及するにつれてスケールメリットが生まれ、貯蔵手段の一つとして、液化という方法が増えていく可能性はあるでしょう。
4.材料ベースの貯蔵
圧縮・液化水素貯蔵に代わる手段として、材料ベースでの貯蔵があります。水素を吸収したり、水素と結合するような化学的性質をもつ材料を使用する方法です。
カリフォルニア大学バークレー校では、これまでより軽量で安価な圧力容器を、水素自動車に使用できるようにする吸着剤の開発が進んでいます。
たとえばアンモニアが、この方法で使用される材料の一つ。液化水素のほぼ2倍の体積エネルギー密度をもつため貯蔵や輸送がしやすく、液化よりも簡単に、水素を液体燃料へと変えることが可能です。
水素貯蔵技術の次のステージ
真の脱炭素社会・脱炭素経済を実現するために必要なこと。それは、シーンに応じた最適な水素貯蔵方法を見極め、水素の可能性を最大限に引き出すことです。そしてまた、技術的な可能性のほかに、経済的にも実行可能な方法でなければなりません。
昨年、英国のランカスター大学の国際科学者チームが、マンガン水素化物から生成される新材料を発見しました。現在の燃料電池技術の4倍の量の水素を貯蔵可能で、外部からの加熱や冷却も必要としない材料です。この研究自体は、水素を燃料とする自動車の開発を進める中で行われたものですが、今後、水素の大規模な市場を生み出すことにもつながっていくと期待されています。
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